番外編・登場人物 ![]()
山下礼司 ・・・・・・ 17歳 高校2年生
父親のレンに心を開く
山下レン ・・・・・・ 礼司の父親
男らしく優しく強い人でもある
中村千春 ・・・・・・ 礼司のカノジョ
母子家庭で育つ
今まで の ストーリー ![]()
「1」 「2」 「3」 「4」 「5」 「6」 「7」 「8」 「9」 「10」
「11」 「12」 「13」 「14」 「15」 「16」 「17」 「18」 「19」 「20」
「21」 「22」 「23」 「24」 「25」 「26」 「27」 「28」 「29」 「30」
「31」 「32」 「33」 「34」 「35」 「36」 「37」 「38」 「39」 「40」
「41」 「42」 「43」 「44」 「45」 「46」 「47」 「48」 「49」 「50」
「51」 「52」 「53」 「54」 「55」 「56」 「57」 「58」 「59」 「60」
「61」 「62」 「63」 「64」 「65」 「66」 「67」 「68」 「69」 「70」
「71」 「72」 「73」 「74」 「75」 「76」 「77」 「78」 「79」 「80」
「81」 「82」 「83」 「84」 「85」 「86」 「87」 「88」 「89」 「90」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
カレンダーでは11月に入っているというのに、
梓川を伝って吹いてくる風は、とても清々しかった。
小さかった頃の思い出話しを、いくつか懐かしそうに話した後、
礼司は、しばらく黙って周りの景色や空気を堪能していたが、
「 父さんと、この場所で話しがしたかったんだ。
せっかくの休みだったのに誘っちゃって、悪かったかな。 」
そして・・・思い切って礼司は話し出した。
「 昨日、千春から、父さんのことを含めた全てのことを聞いたって、
オレ、言ったよね。
実はオレも春休みの3月30日に、K街にいたんだ。
そこで偶然に若い女と腕を組んで歩く父さんを見た。
あの時は、その若い女が千春だってことが、わからなかった。
2人共、後ろ姿だったから・・・。
でも父さんの横顔や、父さんの誕生日の時にプレゼントした若草色の
カーディガンをハッキリと見た。
だからオレ・・・父さんが不倫をしているんじゃないかって思って、
あの時から、すごく父さんを憎んだ。
それを知った時の、母さんや美生が悲しむ顔だって見たくなかったし、
ずっとオレ・・・自分の胸の中に、それをしまいこんでた。
でも・・・昨日、千春から話しを聞いて誤解だったってわかったよ。
父さん・・・・今まで辛く当ってしまって、ごめんなさい。
父さんをずっと疑って憎んでたオレって、すごくバカだったよ。
嫌な思いを、沢山させちゃったね・・・。 」
礼司は深くうな垂れた。
「 そうだったのか・・・。
でも・・もし父さんが、礼司の立場だったら、
同じことをしていたかもしれないし、気にするな。
礼司も、ずっと誰にも言えなかっただろうし、苦しかっただろう。
ごめんな・・・疑われるようなことをしてしまって。 」
レンは礼司の苦しみを痛いほどに感じながら
「 あの子には少しでも前を向いて欲しかったんだ。
父さんは ”もうあんなことはしません” と
援助交際をやめることを真剣な目をして誓った、あの子を信じてる。
誰にだって間違いはある。
その間違いを、後々になってからも、
ずっと責めたり、祭り上げたりして、汚点にすることよりも、
あの子の人間性を父さんは信じた。
もう礼司もわかっていると思うけど、あの子はすごく良いものを
持っている子だろう?
だからあの子が、礼司のことを好きだってわかった時、
父さんは迷わずに、気持ちを伝えてみることを、あの子に勧めた。
あの子から礼司を好きになった理由を聞いたのも、決め手の一つだった。
あの子は礼司の外見だけではなく、
礼司自身の中身を、ちゃんと見ている子だ。
でもあの子だって、おまえに気持ちを伝えることを
すごく迷っていたんだよ。
それほどに、あの子は礼司のことを大切に思っていたんだ。 」
レンの話しを聞きながら、礼司は胸を痛めていた。
ーー千春って、そういうヤツなんだ。
だからオレは、そんな千春のことが好き・・・。
「 オレ、正直に千春がエンコウしていたこと、すごくショックだった。
アイツがオレの知らない別の人間に思えた。
なんで千春が?・・・・って、何度も思ったよ。
それに父さんと街を歩いてた ”若い女” が千春だって、わかった時、
オレは千春が、父さんとエンコウをしていたとも疑って
キツイ言い方をして責め立ててしまった・・・・。
でも話しを聞いていく内に、それもオレの誤解だったってわかったし、
千春に感情移入している自分がいた。
そうしたら千春の寂しさや苦しさが、
オレの意識の中に流れ込んできて・・・。
いつの間にか千春を許していた。
こんなことを父さんに言うのは、すごく照れくさいけど
この場所にいるから、素直に言えるんだなって思える。
千春が・・・・どんな千春だって・・・・オレにとって好きなことに変わりはない。
すごく大切な存在だってことにも、改めて気付かされてた。
大切だからこそ、丸ごと受け止めてやりたい・・・。
エンコウをしていた千春も、もちろん千春自身ではあるけど、
そんなの・・ほんの一部に過ぎないし、それだけが千春の全てじゃない。
でも、なぜか?そのほんの一部すら、
オレには愛おしい・・これって変かな? 」
「 いや、変じゃない。 」
「 オレは千春の全てが好き。 」
レンは黙って頷いて
「 礼司・・・。
父さんは、万が一 ”あの子の全て” が礼司に知れてしまったとしても、
礼司なら、きっとあの子のことを受け入れるだろうって思ってた。
父さんが ”気持ちを伝えてみたら” と、
あの子に告白を勧めた大きな理由は、
あの子なら、礼司を変えてくれるって思えたし、
礼司なら、あの子を救えるって思えたからだ。
それに・・・礼司があの子に夢中になる予感もあった。 」
「 父さんには、何でも見透かされているんだな。
いつも仕事ばかりの印象を父さんに強く感じていたから、
オレや美生のことなんて、たいして知らないだろうって思ってたんだ。
あっ・・・ごめん・・・。
でも、それは間違いだったって、わかったよ。
やっぱり父さんって、改めてすごい人なんだって思う・・・。
いつもオレや美生のことを、見守ってくれていたこと、
信じてくれていたこと・・・・オレや美生は愛情を
いっぱい貰っていたんだなって思う。
オレ・・今まで、それに気付いてなかった・・・っていうか、
感覚的に気付いてはいたのかもしれないけど、
その安心感の中に、どっぷりと浸かっていて、生きているのが当たり前、
こうやって何不自由なく生活しているのが当たり前みたいな感覚
だったんだと思う・・・。
父さんや母さんの思いを、考えようともしなかった。
愛情って、目には見えないけど・・・見えないものだからこそ、
最も大切な、最上級なものに値するんだなって・・・。
お金や、どんな高価な物にも変えられない。
オレね。
どうして父さんに、ここに連れて来てもらったかっていうと・・・。 」
そこまで言うと、礼司は悪戯っぽく笑った。
「 千春から聞いたんだ。
父さんと母さんの大恋愛の話し・・・。
あっ・・・もう中学生の頃の子供だったオレとは違うよ。
しっかりと事実を受け入れられた。
オレ、そんな父さんと母さんの子供で良かったって、本当に思った。
だから父さんや母さんみたいな大恋愛を千春としたくなった。
それと・・・今日、ここで誓いたかったんだ。
これからも千春のことを大切にするって・・・。
オレ、将来の進路のことも真剣に考えていく。
それで・・・・千春と、お互いに自分を高め合って
今よりも、ずっとずっと大人になっても、
お互いの気持ちが変わらなかったら、
父さんが母さんにしたように、
ここで千春にプロポーズをしたい。
いいよね?・・・父さん・・・。 」
子供のように夢中になって話す礼司の思いを、レンはしっかりと受け止め
「 父さんも、そうなることを信じている・・・・礼司・・・。 」
レンと礼司は、改めて親子のつながりを、お互いに強く感じ合っていた。
「 本当に、ここに来て良かった。
ありがとう、父さん。 」
「 父さんだって礼司と、こうやって話せたこと、嬉しかった。
それと礼司も、この場所が好きだってことも・・・。 」
レンは微笑み、
「 さぁ、おばあちゃんのところに行こうか。
母さんが今朝、こっちに父さんと礼司が行くことを、
おばあちゃんに連絡してくれたんだ。
今年の夏休みは、こっちに帰れなかったからなぁ。
おばあちゃんも、きっと礼司に、ものすごく会いたいだろう。
早く来ないかと、待っているはずだ。
行こう!! 」
「 うん。 」
礼司は祖母である、咲子の明るい笑顔を思い浮かべた。
2人は ”あの場所” と称す安曇野の梓川の土手を後にした。
「 礼司・・・。
しばらく見ない内に、すごく男らしくなったような気がする。
そうやって、だんだんに大人になっていくんだね。
礼司がお嫁さんをもらうまで、私も生きていなくっちゃね。 」
目を細めて感慨深げに、しんみりと言う祖母の咲子に
「 おばあちゃん、絶対に長生きしてよ。 」
礼司は微笑んだ。
「 さぁ、玄関先じゃ寒いだろうから、中に入って!
レンさんも疲れたでしょ? 」
いつもの大らかで明るい咲子に戻っていた。
レンと礼司は、亡くなった咲子の夫である、昭彦の位牌に手を合わせ、
咲子に夕飯をもらって、お互いに積もる話しをし、
和やかな時間を過ごした。
そして帰る時間になり、
「 今日は、突然に来てしまって申し訳なかったけど、
久々にいろんな話しが出来たし、
夕飯までご馳走になって、すごく助かりました。
これから特に寒さが厳しくなるけれど、
お義母さんも風邪などひかないようにしてくださいね。 」
レンが挨拶をすると
「 ありがとう。
今朝、ミオから電話で、2人がここに来ると聞いて驚いたけど、
私は嬉しかったし・・・・いいのよ・・・レンさん。
レンさんも、仕事が大変だろうけど、身体を壊さないようにしてね。
それと・・時々ミオから電話でオノロケを聞かされるんだけど、
いつもミオのことを大切にしてくれて、ありがとう・・・。 」
咲子は目を細めて微笑み、そう言った後、
「 礼司、今を大切に過ごしてね。
貴重な時間を見逃がさないようにね。 」
「 うん、わかったよ。
もう今までみたいに無駄には過ごさない・・・。
一日、一日を大切に過ごす。 」
礼司は咲子の言葉を、しっかりと胸の中に焼き付けた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
父親 の レン に 対し 自分 の お腹 の 中 の こと を
告げること が できた 礼司。
梓川 を 望む 景色 の ように 清々しかった と 思います。
レン と ミオ から の 愛情 を しっかり と 受け止め
大人へ と 着実 に 成長していっているよう です。
次回 は 自宅マンション に 帰ってきてから
夜中 の レン と ミオ の 会話 です。
(
ムフフ を 期待している そこの あ・な・た
違いますよ
)
今日 も ご愛読 ありがとう です m(_ _ )m
なんちゃって作家 Yu