「 違うよ、レン・・・・。 」

私は木の上の 《 男の子 》 に見守られていると感じながら

彼を優しく見つめて

「 あの頃のレンは、この場所で 

  《 さよなら 》 の意味だけで、

  たんぽぽを私に渡したのかもしれないけど

  別れの意味だけだったのなら

  私たちは、こうして再会も出来なかったはず・・・。

  レン・・・・たんぽぽの花言葉って知ってる?

  花言葉は・・・・・ 《 真実の愛 》 ・・・・・。

  レンが子供の頃、私に差し出してくれた、たんぽぽは

  大人になって再会したら 《 真実の愛 》 を2人で探そうっていう

  《 約束 》 だって、私は思ってる!

  きっと、このたんぽぽが私たちを、

  また引き会わせてくれたんだよ。

  子供の頃に一度離れ離れになってはいても、

  レンが私にくれた、このたんぽぽで、

  ずっと私達は繋がっていたのかもしれない 」 と

私はポケットから、たんぽぽの押し花のしおりを出して、彼に見せた。






「 たんぽぽは・・・・再会して、真実の愛を探す約束? 」

オレは呟きながら、涙が出そうになった。

「 ミオ・・・・ありがとう。

  オレ、ミオの言っていること、信じられる。

  たんぽぽは 《 さよなら 》 の意味だけでなく

  オレとミオ、2人の 《 約束 》 だったってこと・・・。

  だからオレたち、こうしてまた会えた。

  大人になって再会してから、オレは、ミオにまた恋をした。

  ミオに恋をしてから、いろんな事があったけど

  それを乗り越える度に、2人の繋がりも

  少しずつ強くなっていたように、オレは感じてた。 」

オレのたんぽぽに対する、暗い思いを彼女が払拭してくれた。

子供の頃、ここで彼女に、たんぽぽを差し出してから

数年後の今日・・・・オレは彼女によって、新しく生まれ変われたような

気がした。

今までだって、オレの暗い心に光りを差し込んでくれていた彼女。

オレは、どんなに救われていただろうか。

そんな彼女だから、いつまでも一緒にいたい・・・・・。

これから一緒に人生を共にする伴侶は

彼女じゃなきゃ、きっとオレはダメなのかもしれない。

そして・・・彼女だからこそ、オレは幸せで満たしてやりたい。

そんな思いが、オレの背中を押した。

「 ミオ・・・・・・・・キミに今までも、どんなに救われただろう。

  子供が出来たからとか、関係なく

  いつか言おうって思っていた事を、ここで言いたい。

  ここがオレとミオにとって、とても大切な場所だから・・・・・。

  ミオの妊娠が、ハッキリした時点から、ここで言おうって決めていた。

  ミオ・・・これからオレの言う事を、よく聞いて 」 

オレは彼女の目を真っ直ぐに見ながら

「 これからもずっとずっと何があっても、ミオと一緒にいたい。

  今までもミオをずっと見てきて、一緒に暮らしてみて、

  どれだけオレにとって大切な存在なのかが、わかった。

  ミオと一緒なら、辛い事も乗り越えていこうという、気持ちになれる。

  ミオ・・・・オレの妻になってほしい。

  オレと結婚してください。

  オレにとって

  この世で最も愛おしい、ミオとお腹の中の赤ちゃんを守りたい。

  絶対にオレの手で、幸せにしてやりたいから・・・・・。

  だから・・・・・・よろしくお願いします。 」

オレは、ずっと飲み込んでいた言葉を

今、やっと彼女に伝える事ができた・・・・。

オレを優しく見つめる彼女は微笑み、ハニカミながら

「 レン・・・・。

  ありがとう!!

  私、レンの事を信じて待っていて良かった。

  レンは、私が今まで恋をした人、付き合ってきた人とは

  全く違うものを持っていた。

  だからなのか?私はレンに強く惹かれていった。

  明らかにレンだけ、他の人達とは何かが違っていた。

  私にはレンでなければいけないっていう思いが強かった。

  それは・・・今まで私が、あの記憶の中の男の子の事を・・・レンを・・・

  無意識に探していたからかもしれない?!

  プロポーズの返事は・・・・・。

  もちろん私たちを守ってくれる人、幸せにしてくれる人は

  レンしかいないと思っています。

  私にとっても、レンは大切な人だから、レンと一緒に幸せになりたいし

  辛い事も分け合い、助け合っていきたい。

  それにレンをもっと笑顔にできるように

  笑わせてみたい・・・・。

  笑顔になることで、いっぱい幸せが舞い込むように!!

  レン・・・・・・・・・・・私でよかったら

  いつまでも・・・ずっと・・・よろしくお願いします。 」

彼女の返事と同時に、オレは彼女を優しく抱きしめ、

お互いに笑顔で見詰め合った後、唇を重ね合わせた。





彼からのプロポーズ・・・・・。

私は彼が、きっとこの場所で言ってくれると

ずっと信じていた。

だから何も不安がなかったのかもしれない。

私たちの恋愛には、いろんな事があり過ぎた。

そんな中で私の彼への気持ちは

いつも揺れていた。

だけど・・・・・そんな私の事を、今まで彼は何があっても

許してくれ、守ってくれてた。

いろんな事があり過ぎたからこそ

本当の彼を知る事や、本当の私を知る事

そして 《 真実の愛 》 を知る事ができたのかもしれない・・・・。

今、こうして彼に抱きしめられながら

私は彼の体温の温かさに、安心できていた。

私をホッとさせてくれる人は

絶対に彼しかいない・・・・。

そして私も彼を自分の手で幸せにしたい!!

そう誓いながら、木の上の 《 男の子 》 を

見上げると 《 男の子 》 は、大きな瞳をキラキラ輝かせ

私と彼を見つめていた。





しばらくの間

彼女と大木の下で、遠くの景色を黙って眺めていた。

とても心地いい・・・・・。

彼女も同じ気持ちでいるだろうか?

子供の頃に彼女と一緒に遊んでいた、この場所。

この場所で一度だけ、

彼女との別れはあったけれど、長い年月の末、再会して

今日、再び彼女と戻ってきたこと・・・そしてプロポーズができたこと・・・。

ここに来て、本当によかった!!

「 ミオの実家に行こう。

  オレ、ミオのお父さんに

  これから殴られるんだったね。

  お父さんの気が済むまで、何度でも殴られる覚悟はできてる。

  殴られても、たとえ許してくれなくても、ミオへのオレの気持ちを、

  お父さんにもわかってもらえるように

  いくらでも努力していくよ。 」 とオレはキッパリと言った。

彼女は

「 うん。私、そんなレンのことを見守っているよ。

  だからレンらしくでいいんだよ。 」 と微笑んだ。





彼を励ましながらも、私は父が本当に彼の事を

殴ったりはしないだろうと確信していた。

きっと父は彼を気に入ってくれる。

私が、どうして彼を好きなのかを

理解してくれるはずだ。

でも今の彼の真剣な気持ちを台無しにしてはいけないと思い

敢えて、その事を彼に話すのはやめておいた。

そしてふと木の上の 《 男の子 》 の方を見ると

男の子の姿は、もうなかった。

私には、もうその 《 男の子 》 の正体が

誰なのか、わかっていた。

産科で会った時、別れ間際に笑顔で

「 またお姉ちゃんに会えるといいな 」 と言い残し

走り去っていった 《 男の子 》 の姿を、私は思い出した。

きっと、あの時 《 男の子 》 は 

私の事を 《 お姉ちゃん 》 ではなく 《 ママ 》 って

呼びたかったのではないだろうか?

---あの別れ間際の 《 男の子 》 の言葉は、

元気に生まれて、会いたいという願いを込めた、 

私へのメッセージだったのかもしれない---

半年後に、きっとまた会えるんだね・・・・・・・・。

パパとママに、力を与えてくれ、見守ってくれて、ありがとう。

私は 《 男の子 》 に子供の頃の彼を重ね合わせ

自分のお腹を優しく触った。





「 ミオ、もう行くぞ! 」

先に歩き出そうとしていた、オレ・・・。

大木の上を見上げながら、微笑み

自分のお腹を触っている彼女に声を掛けると

我に返ったように、ハッとした彼女に

オレは悪い事をしてしまった気分になった。

彼女がオレを勇気づけるように

「 うん!行こう!!

  レンには、私と赤ちゃんがついているから大丈夫! 」 と言った。

不思議だ。

彼女に、そう言われると、本当に大丈夫な気がしてくる。

彼女の父親と、しっかり向き合える気持ちになっていた。

そしてオレの気持ちを察するかのように

5月の爽やかな風も

オレの心を穏やかにしてくれた。





エピローグ に つづく