夕方、定時で帰ろうとする彼女に

オレも無理矢理に仕事を切り上げ

「 一緒に帰ろう 」 と呼び止めた。

だが帰り道も気分が悪そうな彼女に

オレは言葉を掛けられなかった。

顔色も一層に悪い・・・・・。

彼女に負担が掛からないようにと

「 今夜はオレ、コンビニのものが食べたくなった。

  おかずになる物でも買っていこう! 」

彼女は黙って頷いた。





アパートの最寄の駅のコンビニで、おでんを買って

帰って来ると彼女を横にならせ、

オレは鍋を出し、おでんを温め直した。

すると彼女、炊飯器のご飯の量が気になったらしく

「 ご飯は朝、炊いたものが残っているはずだね 」 と言いながら

炊飯器のフタを開けた。

その途端、彼女は顔色を変え、トイレに走りこんで行った。

心配で見に行くと、彼女は吐いていた。





私が吐いていると知り、一生懸命に背中をさする彼に

これ以上、心配を掛けてはいけないと思った。

吐くだけ吐いて、気分が落ち着いた私は

「 レン、これから私の話す事を聞いて欲しいの 」 と

話しをする決意を固めた。





彼女が、これから話すこと・・・・。

オレには、予想がついていた。

オレがそれを現実に受け止められるのか?は

彼女の口から、ハッキリ聞いてからだという

気がしている。

オレは腹を決めた。

彼女の方も、それを話す事に腹を決めたようだった。

しばらくの沈黙の後・・・・・。

「 レン・・・・・・。

  実は今日、行ってきたのは産科だったの。

  私・・・・レンの子を妊娠している 」 と

ポツリと言った。そして・・・・・・・。

「 私・・・・。

  自分が、こんなに早くに妊娠するなんて考えてもいなかった。

  これから自分が母親になるかもしれないだなんて・・・。

  今は、いろんな不安が生じて怖い。

  でも・・・それでも・・・レンとの赤ちゃんを、私は生みたい・・・。

  いきなり、こんなこと言って、ごめんね。

  驚いたよね。

  打ち明けたばかりで、こんな事をレンに聞くのも

  戸惑うとは思うんだけど・・・・・。

  レンの気持ちはどうなのか?

  教えてほしいの。 」

  

  





とうとう彼に話してしまった。

彼は真剣な目をして黙って、しばらく私の顔を見つめていた。

その沈黙が、私には、とても長く感じられた。

そして・・・・・・・・・・・・・・・・意を決したように・・・・。

「 オレ、父親になるんだね? 」 と静かに微笑んだ。

私は彼の意外な言葉に

「 喜んでいいの?

  生んでもいいの? 」 と聞いてしまった。

彼は照れながらも

「 もちろんだよ。

  オレの未来予想図よりも、ずいぶん早くなっちゃって

  ちょっと戸惑っているけれど・・・・。

  それでもオレ、すごく嬉しいよ!! 」 と言った。





彼女が何を言うのか、覚悟をしていたオレだったけど

実際に 《 妊娠 》 という言葉を耳にした時

オレは内心、大きく動揺していた。

でもオレの答えは、最初から決まっていたのかもしれない。

嬉しくないはずがない。

これからの事を考えると、まだ未知なような気がして

正直に不安だけど、彼女とオレの赤ちゃん・・・・。

彼女には生んでほしいと、オレは強く願った。





夕飯はコンビニのおでんと、ご飯だけで

彼女の手料理が食べられない、寂しさはあったけど

夕飯など、そっちのけで

オレはやっぱり素直に嬉しかったのかもしれない。

「 オレ、ミオみたいな女の子がいいな。

  あっ!でもミオのSの部分は似てほしくないな 」 と、笑ったり

「 うーーーん!

  それとも男だったら、オレが鍛えてやれるかも!

  実はオレ、中学の時、部活はサッカーやってたんだ!!

  でも訳があって、途中、退部しちゃったけど・・・。

  とにかく男なら絶対にサッカーを一緒にしたい 」 と、夢を持ったり

「 もうミオをバイクに乗せられない。

  車を買わないといけないよな。

  これから、いろんなことにも費用が掛かると思うし

  オレ、頑張るよ 」 と

いろんな事に希望を持って張り切るオレに

なぜか?

悲しげな顔をする彼女・・・・。

「 ごめんね。

  私、レンが受け入れてくれなかったら

  どうしようって思ってた。

  レンがそんな冷たい人じゃないって

  わかっているはずなのに・・・・ 」





オレは彼女の謝る理由に、多少のショックを隠せなかったが

「 いいんだよ。

  不安になって当然だよ 」 と彼女を慰めた。

彼女だって、とても苦しかったはずだ。

一人で、それを抱え込んでいたのだから・・・・。

これまでの彼女を見てきていれば、それは痛いほどにわかる。

「 オレ、実はミオが妊娠しているんじゃないか?って

  思っていたんだ。

  でもそれをミオに確かめる事が、正直にとても怖かった。

  自分が、その事実を受け止められるのか?が不安だったから・・・。

  だからミオの方から話し出すのを、ずっと待ってた。

  オレこそ、ミオが辛そうにしていたのに

  何も出来なくって、ごめん 」

オレは彼女を優しく抱きしめた。

彼女の妊娠を知ったなら

本当は、この場ですぐにプロポーズをし

彼女の両親にも挨拶をして、許しを得た後、籍を入れるのかもしれないが

今すぐにプロポーズをするのに、なぜか強い抵抗があった。

あの場所に、たまらなく行ってみたい・・・・・・。

オレの頭の中には 《 秘密の場所 》 という

キーワードが浮かんでいた。