駆け出して行った、彼女・・・。
あんなに取り乱した彼女を見たのは、初めてだった。
亜由美の姿を見て、きっと誤解したに違いない。
それは彼女にとって、どんなにショックだったことだろう。
オレが急いで彼女の後を追い、呼び止めると
彼女は立ち止まってくれた。
後ろ姿が震えているのが、一目でわかった。
きっと泣いているはずだ・・・。
だが・・・オレが声を掛けようとした瞬間、
いきなり振り返った彼女に
思いっきり平手打ちをされた。
彼女は泣きながら、再び駆け出して行った。
駆け出した私に 「 ミオ!待って!! 」 と叫ぶ、彼の声が聞こえ
私は立ち止まった。
今更、言い訳なんか聞きたくない!!
涙の他に、怒りまでが込み上げてきて
振り向きざまに、私は思いっきり彼の頬を、ひっぱたいていた。
涙で彼の顔が、ボヤケて見えない。
彼に泣き顔を見られるのが、惨めで、悔しくって
アパートの近くの、路上に駐車してある車まで
私は一気に走った。
もう彼は私を追っては来なかった。
彼女に平手打ちされたショックで、
オレはしばらく放心状態になっていた。
目に、いっぱい涙を溜めていた彼女の顔が忘れられない。
オレは彼女に、なんてことをしてしまったんだろう・・・。
やっとのこと、部屋に戻ると
「 今の子が、レンの彼女なの?
玄関で女の子の声がしたから、気になったの 」 と亜由美。
「 今日は、もう帰ってくれないか! 」
今度こそオレは強い口調で、亜由美に言った。
もう頭の中が、パニクっていて、ぐちゃぐちゃだった。
あれから・・・彼から携帯に着信やメールが
何回も来ていたけど、
私は携帯に出る事もなく着信拒否にし、
メールにも目を通す事もなく、削除した。
彼の下手な言い訳なんか聞きたくない!
彼の部屋から出てきた、エプロン姿の綺麗な女の人・・・。
どこか彼の奥さん気取りで
一目で、ただならぬ関係だと判断できた。
私は彼に二股を掛けられていた?
それがとても悲しかった。
あれから携帯に電話をしても、メールをしても
彼女に連絡がつかない。
メールは読んでいないかも・・・・。
例え、元カノでも気安く、亜由美を部屋に入れていたオレが
一番悪かった。
月曜の朝、オレは重い気分のまま出社した。
彼女の姿を見つけたので声を掛けてみると、
返ってきたのは、事務的な挨拶だけで
すぐに急ぎ足で、オレから離れて行き
彼女は目さえ合わせてもくれなかった。
今日は出社したくなかった。
でも先週、一週間休んだ分の仕事が溜まっているので
頑張って出社した。
あれからの私は笑う事を、忘れてしまったかのようだった。
今朝、彼から声を掛けられたけど
何も話したくない!
顔も見たくない!
私は挨拶するのが、やっとだった。
彼を避けながら過ごした、一週間・・・。
やっと金曜日・・・そこまでくるのが、とても長く感じられた。
その間、私はガムシャラに仕事に専念して頑張った。
1時間の残業を経て、帰ろうとしたら
「 ミオ先輩!今夜、俺に付き合ってもらえませんか? 」 と
タクヤ君に声を掛けられた。
一瞬、彼の嫉妬した顔が思い浮かんだけど
すぐにそれを打ち消し、
私は誘われるままに、タクヤ君の車に乗っていた。