彼女と園田課長の姿を見掛けた後、

コウスケと一緒に飲み屋で飲んでいても

オレは気持ちよく酔う事が出来なかった。

改札口に消えていった2人の姿が

どうしても脳裏から離れない。

あの後、2人はどこへ行ったのだろう?

コウスケの話しに合せるように、笑ってはいても

オレは本当に笑う事ができなかった。





彼女と園田課長の姿を見掛けてしまった、あの夜から

何日かが過ぎていった。

あれからオレの心は、宙ぶらりんだった。

彼女の事を避けるように、仕事をこなしていた。

彼女に対して、オレは

どこか拗ねているかのようだった。

それでも彼女の事が、好きだという事に変わりはない。

とても苦しい・・・。





この頃、彼の様子がおかしい。

どうしたのだろう?

なんだか私は避けられている様にも感じる。

私が何か、気を悪くさせる事をしてしまったのだろうか?

わからない・・・。

声を掛けたくっても、

どこか彼自身が見えない、バリアを張り巡らせているかの様で

近寄ることすら出来ない。





彼女を避ける日々の中で

新しい設計の仕事が舞い込んできた。

中堅の食品会社からの依頼の仕事だ。

そこの工場での工程ラインで

必要な大型の業務機器の設計の仕事だった。

業務機器の設計にあたって

何人かの設計者が組んで、図面を書く。

この仕事での、設計の責任者は園田課長。

図面を手掛ける、メンバーは

オレと、コウスケと、そして・・・彼女だった。





新しい設計の仕事が入って

私は園田課長、コウスケさん、そして彼と組んで、図面を書くことになった。

一人一人が、それぞれの箇所を分担しての

図面書きになる。

時にはメンバーが集まり、打ち合わせ等も

何度か重ねることにもなる。

私を避けているであろう?

彼との接触には、不安はあるけど

これは仕事だと割り切らなくっちゃ。

それに彼とも向き合える、チャンスかもしれない。





新しい仕事に入ってから、初めての打ち合わせがあった。

園田課長から、メンバーが呼び出され、

食品工場で使われる業務機器の用途

・・・どんな役割を果たす機器なのか・・・という

説明を聞いた。

その後、図面を書く上で、

業務機器に組み込む材料や部品、モーター類の

素材や性質・特徴を捉えての打ち合わせをした。

打ち合わせ中、ずっとオレは目の前に座っている、

彼女と目を合せる事ができなかった。





打ち合わせをする時

私はわざと彼の目の前に座った。

でも彼が私に、目を合わす事は一度もなかった。

私はまるで彼の視界から

外されているかのよう・・・。

とても寂しくって、泣き出したくなる気分だった。





打ち合わせが終わってから、

園田課長、コウスケさんは先に行ってしまった。

その後を急ぎ足で行こうとしていた彼に、

私は思い切って、声を掛けた。

「これから一緒の仕事ですね!よろしくお願いします」 と・・・。

強張っていた彼の表情が一瞬、和らいだような気がしたが、

彼は 「よろしく」 とだけ言い、早々と私から離れて行った。





「よろしくお願いします」 と声を掛けてきた、彼女に対して

無碍な態度を取ってしまったオレ・・・。

オレって男は、拗ねて、だだをこねている、子供と一緒じゃないか?

園田課長と彼女が付き合っていたって

彼女が悪いって訳ではない。

これから一緒に仕事をしていく、先輩として

オレは彼女に普通に接することができるのだろうか?





「おい、レン!さっきはどうした?」

休憩時間、コウスケがオレに声を掛けてきた。

オレ、よっぽど様子がおかしく見えていたのだろうか?

オレって、わかりやすい男?

コウスケには彼女への気持ちを、打ち明けてはいない。

だがコウスケは言った。

「ミオちゃんのことか?」

オレは驚きのあまり

飲んでいた、缶コーヒーを吹き出しそうになった。





「おまえのことなら、大体読めるからぁー」 と、コウスケは笑った。

確かに彼女関連の事では、

オレも取り乱す事があり、

コウスケには、とっくに気付かれていたのかも・・・。

「園田課長とミオちゃんが、2人で一緒のとこを見たって

まだ付き合っているとは限らないぜ!

まだそうだって決め付ける事は早い」 と、

オレを励ましてくれた。

コウスケの言う事はもいつも説得力がある・・・。

なんだか少し元気が出てきた。