side N





side O〜**




非常識な時間にピンポンを押して

 

非常識にも部屋に上がり込んで

 

嫌われる為に精一杯

 

精一杯、虚勢を張っていたのに・・・

 



 

和「俺・・・あなたが好きです」

 


 

・・・言わせてしまった・・・



 

普段は能面みたいな白い顔が


感情を精一杯隠しているその瞳が

 

真っ赤に上気して

 

ヒステリックに泣きながら

 

自分に纏わりつく・・・

 

 



あの海の出会いから

 

ふたりの間には同じだけ時は流れて

 

今・・・同じ部屋に居て・・・


あの日キラキラの海を前にして


簡単にこの胸に飛び込んできた人が


目の前で子どものように泣いている。





素直そうな髪を撫でてやった。





泣き止んでよ・・・


そんなに泣くほどの価値のない男だ。


この世界には9年も遅れてきた。


女性は愛せないし


男性も不幸にしてばかり。





君は自分のことを「俺」って言うんだね。


そんなことも知らないほどに


君から逃げてきた。





始めるのが、怖いんだ。


今朝のリストカットの彼の例もある。


君を不幸にしたくない。




だからといって・・・


子どものように泣き喚く君を 


振りほどくほど乱暴なこともできない。


君がくれたぎこちないキスにも


応えてあげられずに・・・





・・・しばらく動けなかった。


・・・動けなかったんだ・・・





この部屋を訪れて


2時間が経過した頃


やっと・・・


もう疲れて


身も心も


ヘロヘロになっている


自分に気がついた。





とにかく休ませてくれ。


二宮さんに説明する気はない。


君は無関係だ。


こちらに問題がある。





少なくとも君は綺麗なままで・・・





自分という人間が酷く汚れて見えていた。


シャワーを借りても


今朝の血はまだこびりついて見えた。


ソファーを借りて目を閉じると


夜の静寂が自分を包んでくれた。






じっと見ていると分かっていた。





多分出会ったあの海から・・・


多少こうなることも、分かっていた・・・




予測できなかったのは、今の自分。




密室にいるというのに


愛の告白を受けたというのに





そこは反応しないまま・・・





ただ酷く疲れていた。





言い訳はいくらでも思いつくけれど


事実を言ってしまえば・・・





勃たなかった。


二宮さんに・・・勃たなかったんだ・・・













あと四話です。