(智)
汗だくになってニノを洗って
タオルで拭いてやると
ニノ「ベッドで待ってるね♡」
って・・・マジか。
俺は大急ぎで自分も洗って
ニノを追いかけた。
・・・寝てる・・・
俺はニノの真横に寝転んで
その美しさに見惚れてた。
スースーって寝息が聞こえるのも愛しい。
胸のあたりが上下に動くのもたまらない。
もう、ねーちゃんに返したくない。
俺のニノになってくれないかな。
自分の手を見る。
・・・俺、智の手が好き・・・
手だけ、合格もらったから
お前の好きな手だよ・・・ニノ・・・
この胸から愛しさが勝手に溢れてくるんだ。
俺はニノの柔らかな髪を撫で
手の甲で頬に触れ
指で唇を往復した。
それは穏やかな時間で
それだけで俺の胸はいっぱいになった。
ねーちゃんからのラインに気付かないまま
朝になって・・・
ニノは猫ちゃんに戻っていた。
俺のお腹に乗ってフミフミするニノを撫で
高級猫缶とお水をあげて
智「行ってくるね。今日も早く帰るよ」
ニノ「ニャー」
これが俺とニノのその日の朝のこと。
新しい勤務地に赴いて挨拶回りをして
やっと夕方プライベートの着信を確認した。
姉📧「昨夜ラインで報告した予定通り
羽田に着きました。
この足で猫ちゃんを引き取りに行きます。
合鍵は持ってるから智はお仕事頑張ってね。
長い間、本当にありがとう。
お世話になりました。
お礼はまた改めてします」
・・・え?
俺はそのメールを、もう一度読んだ。
ニノを連れて行った・・・?
俺はどうしようもなくイライラした。
いや、俺のニノを迎えに行こう。
ねーちゃんに連絡しようと思って
携帯を開いた瞬間に姉から着信があった。
姉📱「智!どうしよう!ニノがいない」
智📱「・・・え、ええ?」
姉📱「探してるんだけど、いないの。
智んちに帰ったのかもしれない。
どうしよう。
電車で3駅も向こうなのに
迷子になってるよね」
俺は帰路を急いだ。
俺の家に戻っているかもしれない。
閉め出したらかわいそうだ。
あんなに可愛いんだ。
誰かに拐われたら
誰かに持っていかれたら・・・
俺は居てもたっても居られなかった。
地球を反対に回したら、時間を戻せる?
昨夜のラインの時点で気付いていれば
ねーちゃんに連れて行かないでって
言えたのに。
自分の時間を後悔した。
祈るような気持ちでマンションに着いた。
入口の植え込みや廊下を注意深く探しながら
自分の部屋まで上がったけれど
ニノは居なかった。
ねーちゃんが迷い猫ネットやツイッターに
ニノを探す内容を書き込んでいるのを
見つけたけれど・・・
ニノの居ない部屋は寂しくて虚しくて
俺はまたニノを探しに
俺んちからねーちゃんの家までの道を
歩き始めた。
ニノが居ないと、俺・・・
ニノが心配で、俺・・・
祈りは、やがて自分への怒りになる。
ニノに何かあったら、どうしよう。
無事で居てくれ。
ニノが居ないと、俺の時間が止まる。
ニノが居ないと、俺、息も吸えないよ。
いつの間にか雨が降り出していた。
ニノがずぶ濡れになっていたらどうしよう
ニノが川にでも流されていたらどうしよう
俺も雨の中、傘も持たないで
必死で夜の町を探し歩いた。