こんなことを言った時があった。

 

「あの時もさ、

 ぐわ~んと振り返って

 大きな髪留めした女の人、

 見てたよね。

 何をそんなに見てた?

 いい女だと思って?」

 

クマオが言った。

 

「は?

 見たらあかんの?

 そんなに悪いこと?」

 

 

その好戦的な言い方に

私は少し怯えてしまった。

クマオは責められていると思うと

いつもこんなふうになる。

 

 

「いや、

 悪いとかそういうんじゃなくてさ、

 シンプルにすごく失礼じゃないかと

 思ってさ。

 だって隣に私、いるんよ。

 私、恥ずかしかった。」

 

 

クマオはハッとした顔をした。

次の言葉を話す時の声が変わった。

 

「ボクって最低やな」

 

やっと私の言葉が刺さったと

思ったが、

てか

こんな簡単なこと、

人として当然なこと、

言わなきゃわからない人だった?

 

 

 

 

 

 

 

そしてさらに言えば

 

クマオがわかったのは

この一瞬の間だけで

この言葉がこの先クマオの心に

とどまることはないということ。

 

 

こういう人に

期待したら

そりゃあケガするはず。

 

 

 

 

 

と、こんなふうに書いてはいるが

だからと言って

クマオのことを「最低男」だと

ジャッジして

こき下ろすつもりはない。

ただそうだったんだと

静かに自分の心で思っているだけ。