ピンの予防注射は見送られた。

 

昨年の血液検査の結果、

腎臓の数値が少し悪くなっていた。

それでも元気なので特に心配は

していなかったのだが、

 

もし今年、昨年よりも数値が

悪くなっていたら

年齢のことも考慮して注射はできないと

判断されるらしい。

 

 

「今回は血液検査だけにして

 その結果を見て注射できるかどうか

 判断しましょうか。

 注射はね、

 ちょっと気をつけないとね、

 もうこの年齢ですからね」。

 

 

先生の言葉に、

クマオと顔を見合わせて頷き合った。

 

 

 

ピンの年齢はじゅうぶん承知していた

つもりだが、

獣医師に改めてそう言われると、

ズンと胸に来るものがあった。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

日々ピンを見ていて感じるのは、

全く犬という生き物は、

(おそらく動物全般)

老齢と進む老いに粛々と

向き合っていくんだなということ。

 

 

ヨタヨタ階段を昇り、

ステップに上がってそろりと

ソファに座る。

目が悪くなり耳も遠くなって

ふいに表れた私の姿に驚く顔を

する。

 

 

人間なら、

「ヨッコイショ」と言い、

「イタタタタタ・・」と言い、

「ちょっとこれして」とか、

「え?何?」と大声で言うところを

 

 

何一つ言わず、

声さえ出さず、

あの達観した表情でやり過ごしている。

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

人間だけが時間の概念を把握し、

カレンダーを持ち予定を立てる能力を

授けられている。

 

 

犬は自分の日数(ひかず)を知らないのなら、

この老いをどのように感じているのだろう。

昨日までできていたことができにくくなる、

そんな自分のことをどう感じているのだろう。

 

 

「ピン、ピン」

愛おしくて哀しくてたまらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろこういうのを

考えようと思う。