「オバさん」が亡くなってから、
4年後の夏、祖父は亡くなった。
晩年の祖父はますます無口
になった。
友人もいなかった。
ごくたまに親戚の人が訪ねて来ても、
会話がはずむようなことはなかった。
食事も自室で食べるようになり、
私が家にいる時は、
いつも私がごはんを運んだ。
それ以外でも
私は時々、祖父の自室を覗いた。
高齢の祖父が心配だったのだ。
私を見ると、
「りこちゃん、
目薬さしてくれはりまっか?」と
言い、
私がさしてあげると、
「はい、ありがとさんでした」と
ゆっくりはっきり言って、
いつも1万円札を渡してくる。
両親に言うと、
笑いながら「もらっときなさい」と
言うので、
それは私のお小遣いになった。
90歳を超えても、
幸い頭はしっかりしていた。
しっかりしていただけに、
晩年の祖父の孤独感とやらは
いかほどのものだったのだろうかと
今でも時々思う。
・・・・・・・・・・・・
さて、その日。
祖父は
顔に白い布をかけられ
仏間に寝かされていた。
親戚が集まり、
がやがやしていた。
私だけが、
庭の方を見て座っていた。
ふと、
明るい光のボールのようなものが
シューッと音を立て、
庭の樫の木を一周してまた空に
向かって消えていった。
「あ!」
私は声を出した。
「何?」
みんなが私を見た。
「さっき、光のボールが
庭に降りてきた」
自分でそう言いながら、
あぁ、あれが火の玉というもの
なのかと気づいた。
みんな一斉に庭の方を見たが、
その時には何もなかった。
「りこちゃん、
みんなを怖がらせようとして
ええ加減なこと
言うたらあかんで」
誰かがそう言った時、
父が口を開いた。
「いや、
りこが言うならそれはほんまの
ことや。
りこには・・・
りこにだけにわかることがあっても
おかしくはない・・・」
え?
何?
当の私は何の話かわからなかった。
父と母は顔を見合わせ、
それから、
「実は・・・・」と続けた。
あの夜の話だった。
その時まで私はすっかり忘れて
いたが、
父が話し出し、あぁそう言えば
そんなことがあったと思い出した。
それは、
ある種の霊体験だった。
当の私はそれと気づかず、
そのような体験をしていたのだった。
・・・・・・・・・・・・
私は白を買った。


