抗生剤の点滴からアナフィラキシーになった。これは医療ミスではない。治療の合併症だ。
点滴の種類を間違えたのであれば、医療ミスになる。ところが、副作用がでるとは認識していないのに、アナフィラキシー状態になったことは病院のミスではない。
医療者はこの区別ができるが、一般の人にはわからない。すべて医療ミスだといいはじめる。
抗生剤を点滴でいれる。劇的な効果が期待できる一方で、激烈な副作用もでやすい。
のどが痛いので抗生剤を点滴してくれと言ってくる人が多い。効くことは効くが、アナフィラキシーなどがでてくる可能性は高くなってしまう。だから、必要がないのに、抗生剤の点滴をすべきではない。
僕が患者に言われたら、必要かどうかを判断し、必要なければ点滴はしない。しかし、患者は「点滴してすぐに治せ」と言ってくる。危険の大きな治療なのだ。
たとえば、タクシー運転手に「急いでいるから時速200km/hでとばしてくれ」と言われているようなものだ。タクシー運転手はどんなにお客が急いでいようが断るはずである。リスクが高すぎるのだ。事故を起こすリスク、そして警察につかまるリスク。
時速200km/hで車を運転して、事故をおこせば運転手の運転ミスだと言われても困るものだ。リスクが高い治療はしないほうがいい。ただ、必要な場合にはリスクを理解したうえで、治療も行う。それができるかどうかは技術の差だが、うまい医師がおこなったって、アナフィラキシーショックは起こり得る。それを防ぐには、その治療を最低限にしぼることである。
